【ウォーキング効果:エビデンス紹介】「1日1万歩」必要? 最新研究が明かす「歩数」と「速さ」の黄金法則

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「健康のために1日1万歩歩きましょう」このフレーズ、誰でも一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、心のどこかでこう思っていませんか? 「その1万歩に科学的根拠はあるの?」 「ただダラダラ歩くだけでも効果があるの?」 「忙しくてそんなに歩く時間はない!」今日は、そんな疑問に科学的な答えを出した、研究結果をご紹介します。医学誌『JAMA Internal Medicine』に掲載されたこの論文は、私たちの「歩き方」の常識をアップデートするかもしれません。

これまでの研究とはレベルが違う? 「前向き研究」の凄さ

今回ご紹介するのは、英国の大規模なバイオバンク・データを用いた研究です。 この研究が優れている点は、その「規模」と「正確さ」にあります。

  • 対象者数: 40歳から79歳の男女 78,500人
  • 測定方法: 自己申告のアンケートではなく、手首に「加速度計」を24時間・7日間装着し、実際の身体活動を客観的に測定しました。
  • 追跡期間: 測定後、中央値で7.0年間という長期にわたって追跡調査を行いました。

つまり、過去の記憶に頼るのではなく、「正確なデータを取ってから、未来の健康状態(死亡や病気の発症)を追いかける」という「前向きコホート研究」の手法をとっているため、結果の信頼性が非常に高いのです。

事実1:やっぱり「歩数」は正義だった

まず結論から言うと、「歩けば歩くほど、死亡リスクは下がる」ことが証明されました。 データ解析の結果、1日の歩数が2,000歩増えるごとに、死亡リスクは以下のように着実に低下することが判明しました。

  • 全死因の死亡リスク:8% 低下
  • がんによる死亡リスク:11% 低下
  • 心血管疾患による死亡リスク:10% 低下 (※心血管疾患とは、心筋梗塞(冠動脈疾患)、脳卒中、心不全などを指します)

この健康効果は、およそ1日10,000歩に達するまで続きます。 あまり歩かない人と比較して、1万歩近く歩く人は、死亡リスクの絶対値がトータルで約36%も低くなるという結果が出ています。

さらに重要なのは、「ここまで歩かないと意味がない」という最低ラインが見つからなかったことです。つまり、1万歩に届かなくても、今より少し歩数を増やすだけで、確実に健康へのプラスになるのです。

事実2:量より質? 「速歩き」がカギを握る

「毎日1万歩なんて時間がない」という方に朗報です。この研究のもう一つの大きな発見は、「歩行強度(歩く速さ)」の重要性でした。

研究チームは、1日の中で最も速く歩いた30分間の平均歩数を分析しました。すると、「速く歩く習慣がある人」は、総歩数とは関係なく、さらにリスクが下がることがわかったのです。

特に心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全など)については、「速さ」の効果が顕著です。 歩くペースを速めると、心血管疾患による死亡リスクは、単に歩数を増やすよりも大きく(強度指標が10%上がるごとに約14%)低下する傾向が見られました。

ダラダラと長く歩くよりも、キビキビと歩く時間を作る方が、心臓や血管を守るためには効率的である可能性が示唆されたのです。

事実3:「病気にならない」ためにも歩こう

ここまでは「死亡リスク」の話でしたが、「病気にかかること(発症)」自体も防げるのでしょうか?

答えはイエスです。歩数が増えるほど、がんや心血管疾患の発症リスクも低下することが確認されました。 ここでもやはり「速さ」がモノを言います。

  • 心血管疾患の発症リスク:
  • 2,000歩増えるごとに:約 4% 低下
  • 強度が10%上がるごとに:約 7% 低下

心筋梗塞や脳卒中などの発症を防ぐには、歩数を稼ぐことも大切ですが、「速歩き」を取り入れることで、約2倍近い効率でリスクを下げられる可能性があります。

結論:明日からどう歩く?

この大規模研究が教えてくれる「正解」は非常にシンプルで実践的です。

  1. まずは「プラス2,000歩」 今の生活に2,000歩足すだけで、死亡リスクは約10%下がります。エレベーターをやめて階段を使う、少し遠回りをするなど、小さな積み重ねが効きます。
  2. 目指せるなら「1万歩」 健康効果の最大化を狙うなら、1日1万歩は科学的に裏付けられた妥当な目標です。
  3. 時間がないなら「速く」歩く 通勤中や移動中、意識して「早歩き」を混ぜてみましょう。強度は歩数と同じくらい、あるいはそれ以上に、将来の病気を防ぐカギとなります。

「1万歩歩かなきゃ意味がない」と諦める必要はありません。まずはスニーカーを履いて、いつもより少し大股で、風を切って歩いてみませんか? その一歩が、確実に未来のあなたの健康を作ってくれます。

紹介研究:Prospective associations of daily step counts and intensity with cancer and cardiovascular disease incidence and mortality and all-cause mortality. B del Pozo Cruz著

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