コーヒーに関する続報です!
前回のコーヒーの死亡リスクに与える効果の研究結果(こちら!)は、日本人データでしたし、単一の研究を鵜呑みにするのは怖いので、コーヒーの体に与える影響を継続調査し、今回は海外の研究報告結果をシェアします!
医学界で最も権威ある雑誌の一つ『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に掲載された、ある「超大規模」な研究論文をご紹介します。 コーヒー好きの方には、間違いなく朗報となるはずです。

40万人を14年間追跡した「NIH-AARP」研究
今回ご紹介するのは、2012年に発表された「コーヒー摂取と総死亡率および死因別死亡率との関連」という論文です 。
この研究のすごさは、なんといってもその規模にあります。 対象となったのは、アメリカの国立衛生研究所(NIH)とAARP(旧全米退職者協会)が行った調査に参加した、50歳から71歳の男性約23万人、女性約17万人 。合計40万人以上という、地方都市の全人口にも匹敵する人数です。
研究チームは、1995年から1996年にかけて彼らの生活習慣を調査し、そこから2008年まで、なんと約14年間にわたって「その後、彼らがどうなったか」を追跡し続けました 。
結論:「やはり」コーヒーは飲む量が増えるほど「死亡リスク」が低下
結論から言いましょう。 この大規模な調査の結果、「コーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて死亡リスクが低い」ということが判明しました 。
具体的にどれくらいリスクが下がったのでしょうか? タバコや飲酒、肥満度といった他の要因の影響を取り除いた計算結果を見ると、コーヒーを全く飲まない人と比較して、死亡リスクは以下のように変化していました。
男性の場合
- 1日1杯:6% 低下
- 1日2〜3杯:10% 低下
- 1日4〜5杯:12% 低下(最もリスクが低い)
- 1日6杯以上:10% 低下
女性の場合
- 1日1杯:5% 低下
- 1日2〜3杯:13% 低下
- 1日4〜5杯:16% 低下(最もリスクが低い)
- 1日6杯以上:15% 低下
男女ともに「飲みすぎ」を心配しがちな1日4〜5杯のグループで、最も死亡リスクが低いという結果が出たのです。
「たまたま」ではない! 統計が示す「有意差」の凄み
「でも、40万人もいれば、たまたま長生きな人がコーヒー好きだっただけじゃない?」 そんな疑問を持つ鋭い方もいるかもしれません。
しかし、この研究の最大のポイントは、その結果が「統計学的有意差(ゆういさ)」をもって示されているという点です。
1. 「偶然」である確率は0.1%未満:この研究では、「コーヒーを飲む量が増えるほどリスクが下がる」という傾向が本物かどうかを検証しています。解析の結果、この傾向が偶然生じる確率(P値)は 「0.001未満(P < 0.001)」 でした 。 つまり、この結果が単なるまぐれである可能性は、1000回に1回もないということです。科学の世界では、これを「極めて強い関連がある」と判断します。
2. 男性は「1杯」から、女性は「2杯」から確実な差:さらに細かく見ると、男性は「1日1杯」の段階から、女性は「1日2〜3杯」の段階から、統計的に「誤差の範囲を超えて死亡リスクが低い」ことが確認されています 。 「なんとなく良さそう」ではなく、データとして「確実に差がある」と言えるレベルなのです。
どんな病気のリスクが下がったの?
「死亡率」といっても死因はさまざまです。詳しく見てみると、以下の死因についてリスク低下(逆相関)が確認されました 。
- 心疾患
- 呼吸器疾患
- 脳卒中
- 糖尿病
- 感染症
- 外傷および事故
一方で、「がん」による死亡については、全体としてはコーヒーによる予防効果は見られませんでした 。とはいえ、心臓や脳血管の病気、糖尿病といった主要な生活習慣病のリスク低下と関連している点は見逃せません。この結果は、前回の日本人データとある程度類似した結果ですね。
カフェインレスでも効果あり?
「コーヒーは飲みたいけれど、カフェインで眠れなくなるのが心配」という方に朗報です。 この研究では、「カフェイン入り」でも「カフェインレス(デカフェ)」でも、死亡リスクの低下についてほぼ同じような傾向が見られました 。
これはどういうことでしょうか? 研究者たちは、この効果がカフェイン単独によるものではなく、コーヒーに含まれる抗酸化物質(ポリフェノールなど)やその他の生理活性物質が、炎症を抑えたりインスリン抵抗性を改善したりして、健康に寄与しているのではないかと推測しています 。
科学的信頼性を支える「前向き研究」とは?
この研究結果がなぜこれほど信頼されているのか。その理由は、この調査が「前向きコホート研究」という手法をとっている点にあります 。
簡単に言うと、「最初に健康な人を集めて、未来に向かって観察を続ける」というスタイルです。
- 「どっちが先か」が明確 過去を振り返る調査だと、「コーヒーを飲んだから健康なのか」「健康で余裕があるからコーヒーを飲んでいたのか」が曖昧になりがちです。しかし前向き研究なら、「最初にコーヒーを飲んでいた事実」があり、「その後に病気や死亡が発生した」という時間の流れが確定しています。
- 「病気だからやめた」というノイズを排除できる すでに体調が悪い人は、コーヒーを控える傾向があるかもしれません。この研究では、スタート時点でがんや心疾患がある人を除外しているため 、そうしたバイアスを最小限に抑え、「健康な人がコーヒーを飲み続けた結果どうなったか」を純粋に評価できるのです。
まとめ:明日の朝も、美味しい一杯を
もちろん、この研究は「観察研究」であるため、「コーヒーを飲めば絶対に長生きできる」という因果関係を100%証明するものではありません 。しかし、40万人規模かつ14年間の追跡データが示す「偶然ではない有意な逆相関」という事実は、コーヒー好きにとって非常に心強いエビデンスですし、前回ご紹介した日本人データでも類似した結果ですので、コーヒーの死亡リスク低下効果は信頼できそうです。
- 1日1杯よりは複数杯のほうが良さそう(4〜5杯がピーク)。
- 男性なら1杯から、女性なら2杯から「確実な差」が出る。
- カフェインが苦手ならデカフェでもOK。
紹介研究:Association of coffee drinking with total and cause-specific mortality. N D Freedman著


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