「健康のためにタンパク質を摂ろう!」
最近よく聞くフレーズですが、「お肉」で摂るのと「大豆・魚」で摂るの、どちらが長生きできるかご存知ですか?今回は、日本人約7万人を18年間追跡した大規模調査(JPHC研究)のデータを紐解きながら、寿命を延ばすタンパク質の摂り方について解説します。

1. 日本人の場合、「肉」は悪者ではないが…?
欧米の研究では「肉(特に赤身肉)は体に悪い」と言われがちですが、今回の日本人を対象とした研究では少し違う結果が出ました。
• 動物性タンパク質(肉・魚など): 死亡リスクとの明確な関連はなし(中立)。
• 植物性タンパク質(大豆・穀物など): 摂れば摂るほど死亡リスクが低下!
日本人は欧米人に比べて肉を食べる量が少ないため、肉自体が直接的なリスク上昇にはつながっていませんでした。 しかし、「植物性タンパク質もしくは魚からのタンパク質のパワー」がすごかったのです。
2. 「置き換え」シミュレーションが示す劇的な効果
この研究のハイライトは、「もし食事のタンパク源を入れ替えたらどうなるか?」というシミュレーション分析です。
総カロリーを変えずに、赤身肉(牛肉や豚肉)のタンパク質を、植物性タンパク質または魚に「3%」置き換えたと仮定すると、以下のようにリスクが大きく下がることがわかりました。
【植物性タンパク質に置き換えた場合】
• 全死亡リスク: 約 34% 低下
• がん死亡リスク: 約 39% 低下
• 心疾患死亡リスク: 約 42% 低下
【魚のタンパク質に置き換えた場合】
• 全死亡リスク: 約 25% 低下
• がん死亡リスク: 約 33% 低下
• 心疾患死亡リスク: 約 33% 低下
さらに、ハムやソーセージなどの「加工肉」からの置き換えだと効果はさらに大きく、植物性への置き換えで全死亡リスクが約46%も低下するという結果が出ています。
3. 「3%の置き換え」って具体的にどれくらい?
「たった3%でそんなに変わるの?」と思われるかもしれませんが、この「3%」は食事全体のカロリーに対する割合です。
• タンパク質の量に換算すると:約15g
• 食事の規模感でいうと:「毎日のメインのおかず(主菜)の1回分」
これは、食事の付け合わせを少し変える程度ではなく、「1日3食のうち1食のメインディッシュをガラッと変える」くらいの、しっかりとした食事改善に相当します。
4. 明日からできる「タンパク質15g」の魔法
では、その「3%(タンパク質約15g)」とは食品でいうとどのくらいでしょうか?
これらを1日1回、お肉料理の代わりに食べるだけで、シミュレーションと同様の効果が期待できます。
• 納豆なら: 2パック
• 豆腐(木綿)なら: 半丁〜2/3丁
• 魚なら: 切り身1切れ(鮭など)
「夜のステーキをやめて冷奴と焼き魚にする」「朝のハムエッグを納豆2パックご飯に変える」。
そんな「主菜の1回置き換え」が、将来の健康を大きく左右するかもしれません。
5. 【重要】知っておきたい「研究の限界」
最後に、この研究結果を読み解く上で知っておきたい注意点、専門用語でいう「残留交絡(ざんりゅうこうらく)」について触れておきます。
実は、この研究で「植物性タンパク質をたくさん食べている人」は、そうでない人に比べて「タバコを吸わない」「運動習慣がある」「果物や野菜もよく食べる」といった健康的な生活習慣を持っている傾向**がありました。
もちろん、研究チームは統計処理(多変量調整)を行い、タバコや運動などの影響は計算上取り除いています。しかし、それでも「完全にすべての生活習慣の影響を取り除くことは難しい」と著者らも述べています。
つまり、今回見られた寿命が延びる効果は、単に「大豆や魚の成分のおかげ」というだけでなく、「それらを選ぶ人の健康的なライフスタイル全体の影響」が少し残って反映されている可能性があるのです。
とはいえ、それを差し引いても「植物性食品中心の食事」が健康的な選択であることに変わりはなさそうです。今日から「お肉を1回減らして、大豆か魚にする」。この積み重ねが、長寿への近道と言えそうです。
紹介研究:Association of Animal and Plant Protein Intake With All-Cause and Cause-Specific Mortality in a Japanese Cohort. S Budhathoki著


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