こんばんは、今回はスペルミジンについての研究結果を紹介したいと思います。いくつか面白い研究結果を見つけたので複数回に分けて紹介させていただきます。「長生きしたい」「いつまでも若々しい心臓でいたい」。 そう願う私たちにとって、希望の光となるかもしれない成分、それがスペルミジンです。
2016年、世界的な科学誌『Nature Medicine』に掲載された研究で、この成分が単に寿命を延ばすだけでなく、加齢による心臓の衰えを防ぐことが示されました。
今回は、この画期的な研究が「具体的にどのような実験を行って証明されたのか」を解説します。
🔬 実験1:マウスの寿命と心臓はどう変化した?
まずは、「スペルミジンを飲むとどうなるか」をマウスで検証しました。
🐭 どんな実験をしたの?
- 投与方法: 飲み水にスペルミジンを混ぜてマウスに与えました。
- 生涯投与: 生後4ヶ月の若いうちからずっと飲ませるパターン。
- 晩年投与: 人間でいう高齢期にあたる「18ヶ月齢」から飲み始めるパターン。これは「年を取ってから食生活を変えても間に合うか?」という重要な検証です。
- 心機能の測定:
- 心エコー検査: 超音波を使って、心臓の壁の厚さや動きを生きたまま観察しました。
- カテーテル検査: ここが本格的です。マウスの動脈から極細のカテーテルを心臓に挿入し、「心臓内の圧力」と「容積」の変化をリアルタイムで測定。これにより、心臓の「硬さ」や「収縮力」を精密に評価しました。
📊 結果は?
- 寿命が延びた: 若いうちから飲んでも、高齢になってから飲み始めても、マウスの寿命(中央値)が有意に延びました。
- 心臓の「しなやかさ」が復活: 老化したマウスの心臓は硬くなり機能が落ちますが、スペルミジンを摂取したマウスは心肥大が抑えられ、心臓が広がる力が若者レベルに保たれていました。
🧬 実験2:なぜ心臓にいいの?細胞の中を覗いてみた
「効くのは分かったけど、なぜ?」 研究チームは、そのカギが「オートファジー(細胞の自浄作用)」と「ミトコンドリア」にあると突き止めました。
🔬 どんな実験をしたの?
- 電子顕微鏡による観察: 心筋細胞をナノレベルで撮影し、エネルギー工場である「ミトコンドリア」の形や量、筋肉の構造を解析しました。
- 呼吸能測定: 取り出した心臓のミトコンドリアがどれくらい酸素を消費してエネルギーを作れるか、高解像度の呼吸測定装置を使って計測しました。
- 「光る」オートファジー観察: オートファジーが起きると光るように遺伝子操作した特殊マウスを使用。顕微鏡で光るドットを数えることで、細胞内でゴミ掃除が活発に行われているかを可視化しました。
- 遺伝子ノックアウト: 心筋細胞でオートファジーが起きないようにした特殊マウスを作成。このマウスにスペルミジンを与えても効果がなければ、「効果にはオートファジーが必須」という証明になります。
📊 結果は?
- スペルミジンは、古くなったミトコンドリアを分解・リサイクルする「マイトファジー」を活性化させていました。
- オートファジーができないマウスでは、スペルミジンを飲ませても心臓を守る効果が出ませんでした。つまり、「お掃除機能(オートファジー)」こそがスペルミジンの効果の源だったのです。
🧂 実験3:高血圧にも勝てるのか?
「老化だけでなく、高血圧によるダメージも防げるか?」 これを調べるために、塩分に弱いラットを使った実験も行われました。
🔬 どんな実験をしたの?
- 高血圧モデル: 塩分を多く摂ると重度の高血圧と心不全になる特殊なラットを使用しました。
- 血圧測定: ラットのしっぽで人間と同じように血圧を非侵襲的に測定しました。
- 血液分析: 血液中のアミノ酸を分析し、血管を広げる物質「一酸化窒素」の原料となるアルギニンの利用効率を計算しました。
📊 結果は?
- 高塩分食でも、スペルミジンを摂取していると血圧の上昇が遅れ、心不全への進行が抑制されました。
- アルギニンの利用効率が上がり、血管の状態が良くなっていることが示唆されました。
🥗 実験4:人間でも効果はあるの?
最後に、この結果が人間にも当てはまるかどうかの調査です。
🔬 どんな調査をしたの?
- ブルネック研究: イタリアのブルネック地域の住民約800人を対象とした長期追跡調査データを使用しました。
- 食事調査: 118項目の食品摂取アンケートを行い、そこから個人の「推定スペルミジン摂取量」を算出しました。
- 統計解析: 年齢、性別、カロリー摂取量、喫煙などの影響を取り除いた上で、スペルミジン摂取量と「心不全」や「心血管疾患」の発症率に関連があるかを解析しました。
📊 結果は?
- 食事からスペルミジンを多く摂っている人は、少ない人に比べて心不全やその他の心血管疾患のリスクが低く、血圧も低いという強い相関が見られました。
🍽️ 今日から食べるべき!スペルミジン「高配合」食材リスト
この研究結果を受けて、「じゃあ何を食べればいいの?」と思った方へ。 食事からの摂取が重要であることが示されていますので、特に含有量が多いとされる食材をご紹介します。
👑 含有量トップクラス「スペルミジン四天王」
まずは、いつもの食事に少し足すだけで効率よく摂取できる4つの食材です。
- 小麦胚芽
- 圧倒的な含有量を誇る「スペルミジンの王様」。シリアルやヨーグルトに混ぜるのがおすすめ。
- 納豆(および大豆製品)
- 私たち日本人にはおなじみのスーパーフード。発酵過程で濃度が高まります。
- 熟成チーズ
- パルメザン、熟成チェダー、ブルーチーズなど。熟成期間が長いものほど含有量が増える傾向があります。
- きのこ類
- しいたけやシメジなど。加熱しても摂取できるので、スープや炒め物に最適。
📝 まとめ
スペルミジンは、細胞のお掃除機能(オートファジー)を活性化させ、心臓のミトコンドリアを元気にし、高血圧などのストレスから心臓を守ることで、健康寿命を延ばす可能性があります。
研究データでも「食事からの摂取量が多い人ほどリスクが低い」ことが示されています。 サプリメントも良いですが、まずは明日の朝食に「納豆」や「きのこのお味噌汁」をプラスすることから始めてみてはいかがでしょうか?
スペルミジン関係は面白い研究報告が多数ありますので、続報少々お待ちください!
紹介研究:Cardioprotection and lifespan extension by the natural polyamine spermidine. T Eisenberg著


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